- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 0911CD013
- 開始/終了年度
- 2009~2011年
- キーワード(日本語)
- 北極,エルズミア島,化石炭素,温暖化,土壌微生物,放射性炭素,加速器質量分析計,分子レベル放射性炭素分析,氷河後退
- キーワード(英語)
- Arctic, Elsemir island, fossil carbon, global warming, soil microbe, radiocarbon, AMS, CSRA, Glacier retreat
研究概要
北極・高緯度域は、過去の地球規模の気候変動に関する研究からも明らかなように、温暖化による温度上昇の影響を最も強く受けるとされている。陸地面積の約24.5%を覆う北極・高緯度域の土壌圏には、地質時代からの土壌有機炭素が、大量に蓄積されている。温暖化の進行は、これらの気候変動に脆弱な炭素リザーバーを容易に不安定化させる要因となることが懸念される。本研究では、放射性炭素同位体を利用した北極土壌圏の温暖化影響評価手法の確立を目指す。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
本研究は、気候変動において脆弱な地域における温暖化影響評価に向けた総合的な土壌圏炭素動態観測を行うための基礎となる知見並びに観測技術の取得を目的としている。本研究では、大気および土壌層からCO2ガスの採取および土壌深度別の土壌サンプリングを行い、各々に含まれるfossil carbon由来14Cを測定することで、土壌呼吸CO2、土壌内CO2のうち、どのくらいの割合がfossil carbon由来なのかを明らかにする。加えて温暖化に伴う環境変化によるfossil carbon由来CO2発生メカニズムと環境要因との関連性についての解析を行うための定量的な観測データの取得を目指す。本研究で蓄積される観測データは、将来の温暖化による土壌炭素シーケストレーション変動を予測するための土壌炭素コンパートメントモデルの構築に利用され、その進歩に大きく貢献すると期待される。
? 調査研究実施国・地域
本申請課題では、カナダ北極エルズビア島(北緯80度)を調査候補地とする。本地域は、氷河(Arklio氷河)の後退が毎年進行しており、急激な温暖化による環境変化を受けている地域の一つである。
20年度…1トランセクト内で氷河後退時期が大きく異なる3点を選んで、14C観測のための土壌呼吸CO2、土壌内CO2の採取、土壌コアサンプリングとともに、土壌呼吸観測を実施する。自動チャンバーによる土壌呼吸観測は、各トランセクト中2点とする。
この年は、それぞれ6カ所程度の場所で土壌ガス、土壌有機炭素の14C濃度の観測を行う。土壌呼吸速度の観測は、2カ所で行い、採取されるデータの空間的代表性について検討する。
21年度以降…1年目の観測データの解析を行い、2つ目の観測トランセクトを追加するかどうか検討する。トランセクトの追加については、14C濃度だけでなく、土壌呼速度の空間的代表性についても考慮して決める。空間的代表性が確認された場合、21年度以降は土壌呼吸速度測定を行った2地点に加え、さらに土壌有機炭素の14C年代結果の中間的な2エリアから2観測点を追加し、各エリアにつき3カ所で土壌呼吸測定を実施し、土壌有機炭素の14C測定の結果と土壌呼吸速度量変化の要因となる土壌有機炭素の質の変化(土壌微生物や永久凍土融解によるfossil carbon量の変化)の検出感度をあげて、遷移状態の解析を高度化する。
今年度の研究概要
今年度は、H20年度採取した土壌試料、ガス試料の分析を進める。特に微生物による土壌炭素分解についての定量化をめざしつつ、有機物の種類(化石炭素)による分解特性について同時に検討を進めていく。
備考
研究代表:筑波大学大学院生命環境科学研究科 准教授 内海真生
- 関連する研究課題
- 0 : その他の研究活動
課題代表者
内田 昌男
- 地球システム領域
- 主幹研究員
- 博士(農学)
- 化学,地学,理学