- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1517CD029
- 開始/終了年度
- 2015~2017年
- キーワード(日本語)
- 放射性セシウム,溶存態137Cs,底質,プランクトン
- キーワード(英語)
- radiocesium,dissolved 137Cs,sediment,plankton
研究概要
福島第一原子力発電所の事故後数年を経過した現在でも、依然として無視できない量の放射性セシウム(Cs)が、森林域から河川を通じて下流に運ばれている。特に福島県浜通り地方の北部を流れる河川では、原発事故由来の放射性Csが上流域に多く沈着したため、今後下流部への放射性Csの移動・蓄積や水生生物の放射能汚染の長期化が懸念される。ところで、この地域の上流部にはダムがいくつか設けられており、ダム湖が放射性Csを含む流入土砂を内部貯留することで、粒子(SS)態放射性Csの流出が大きく抑制されている。したがってダム湖が流域全体の放射性Cs動態に与える影響は大きいと思われるが、実際のダム湖の放射性Cs貯留効果、溶存態の放射性Csの挙動、および水生生物のCs移行に関する知見を実測に基づいて包括的に評価した研究はこれまでに見られない。今後のダム受益地における放射能環境の予測と評価へつなげていくためには、現地観測や室内実験を通じて、ダム湖における放射性Csの動きを解明する必要がある。
そこで本研究では、ダム湖における放射性Cs動態を解明し、放射性Cs流出負荷を低減するための最適なダム管理について考察することを目標とする。具体的には、継続的な現場調査により(1)ダム湖の水・プランクトンの放射性Cs分布と季節変動の解明、(2)形態別放射性Csの年間収支の算定、および(3)ダム湖底質を用いた溶出試験により、現場環境下での湖底からの放射性Cs溶出の評価を行う。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備
全体計画
本研究では3つのダム湖における3年間の現地調査および室内試験によって、(1)水・プランクトン態の放射性Cs (主に137Cs)の変動、(2)粒子態(SS態) ・溶存態137Cs収支、(3)ダム湖底質と模擬湖水を用いた137Cs溶出試験による、現場環境下での137Cs溶出特性について明らかにする。
今年度の研究概要
2015年度:ダム湖流入・放流水における形態別137Cs濃度を連続的に観測する。ダム湖における水・プランクトン態の137Csの変動を観測する。
2016年度:引続きダム湖における水・プランクトン態137Csの動態を観測し、季節変動等の影響を明らかにする。また、ダム湖における形態別137Csの収支を算定する。
2017年度:ダム湖底質を用いた137Cs溶出試験を行い、現場環境下における溶出ポテンシャルを評価する。
課題代表者
辻 英樹
- 福島地域協働研究拠点
環境影響評価研究室 - 主任研究員
- 博士(農学)
- 農学