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2018年10月5日

受賞のお知らせ ~
中田聡史特別研究員が公益財団法人 クリタ水・環境科学研究優秀賞を受賞

概要

受賞者氏名: 中田 聡史(地域環境研究センター)
賞の名称:  クリタ水・環境科学研究優秀賞
授賞機関:  公益財団法人 クリタ水・環境科学振興財団
受賞年月日: 2018年08月31日
受賞対象:  沿岸水環境における静止海色衛星観測データを用いた海面塩分推定手法の開発に関連する研究活動

ひとこと

このような栄えある素晴らしい賞をいただきまして、いまだに信じられない気持ちです。この研究活動は、関係研究機関の多くの研究者のご協力・ご助力により成立しており、活動を通じて研究関係者みなさまとの間に”絆”のようなものが張り巡らされたように感じております。みなさまに、そして、みなさまとのholonicな”絆”に感謝しています。本研究活動では、世界初の静止海色衛星観測プロダクトから、沿岸海域における高頻度・高分解能の海面塩分マップ推定する手法を開発しています。海面塩分の情報は、内湾域の水環境や海洋生態系の保全の観点から非常に重要です。まだ本推定手法は発展途上ではあるものの、ものすごい速さで他研究機関との共同研究へと発展していっています。具体的には、超高解像日本沿岸海洋予測シミュレーションの検証用データとして衛星プロダクトの提供、諸府県の水産試験場との共同研究により漁場推定研究にも利用され始めています。このたびの大変栄誉な賞は、研究関係者みなさまと共有できたものだと大きな喜びを感じつつも、今後ますます精進していこうと身が引き締まる思いです。

【研究内容紹介】

沿岸海域に河川から出水された低塩分水(河川プリューム)は、海洋生態系や漁場環境へ栄養塩を供給しますが、時として有害な赤潮も引き起こすこともあります。それゆえに、低塩分水の指標となる海面塩分(Sea Surface Salinity: SSS)の情報は、沿岸漁業・養殖漁業者からの関心も高く、内湾域の水環境や漁場環境の保全の観点から非常に重要です。本研究活動では、低塩分水に含まれる有色溶存有機物(Chromophoric Dissolved Organic Matter: CDOM)とSSSとの高い相関関係に注目し、世界初の静止海色衛星(GOCI-COMS)によるCDOMプロダクトから、沿岸海域における高い時空間分解能のSSSマップ生成手法を開発しています。現段階では、日本沿岸域において空間分解能500mかつ毎時(1日8回)のSSS衛星データの約7年間分(2011~2017年)が整備できています。この高頻度・高分解能のSSSデータセットを使用し、大阪湾を実験フィールドとして、台風等の豪雨時における河川出水による河川プリュームの詳細な形成過程・動態の解明に貢献することができました(論文①)。また、CDOMプロダクトを用いるとクロロフィルa衛星データの推定精度向上できましたので、台風襲来時の洪水によって、大阪湾奥において形成される河川プリュームと大規模赤潮発生の関連性の解明に迫ることができました(論文②)。
現在は、本研究で開発されたSSS推定技術やデータセットを活用した、挑戦的萌芽研究(科学研究費助成事業)「沿岸域における海表面塩分マッピングのための海色衛星データ同化手法の開発」(代表, H28-H30)の研究活動を推進中です。これら一連の研究活動と連携した共同研究も立ち上がっています。例えば所内では、地域環境研究センター東博紀さん代表の「閉鎖性海域における気候変動による影響把握等検討業務」に参加させていただき、瀬戸内海における海洋再現シミュレーションの検証用データに使用することを検討しています。また、東京大学大気海洋研究所や気象庁気象研究所が開発している超高解像日本沿岸海況再現シミュレーション結果の検証用データとして衛星プロダクトの提供を始めています。また、漁場推定や養殖環境の基礎資料として、水産試験場をはじめとする各研究機関へのデータ提供を試験的に実施しています。このようにして衛星観測SSSマップは、沿岸浅海域における赤潮動態解析や漁海況予測などにむけて有効活用され始めています。

論文1.S.Nakada, S.Kobayashi, M.Hayashi, J.Ishizaka, ほか3名 (2018) High-resolution surface salinity maps in coastal oceans based on geostationary ocean color images: quantitative analysis of river plume dynamics, Journal of Oceanography, 74(3), 287-304. DOI: 10.1007/s10872-017-0459-4 (査読有り)
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10872-017-0459-4
論文2. 中田聡史,小林志保,石坂丞二,山本圭吾,中嶋昌紀,林美鶴(2016)静止海色衛星を用いた大阪湾奥における赤潮動態の解明に向けて,瀬戸内海,72,66-68.(査読無し)

【参考文献】

S.Nakada, S.Kobayashi, M.Hayashi, J.Ishizaka, ほか3名 (2018) High-resolution surface salinity maps in coastal oceans based on geostationary ocean color images: quantitative analysis of river plume dynamics, Journal of Oceanography, 74(3), 287-304. DOI: 10.1007/s10872-017-0459-4 (査読有り)
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10872-017-0459-4

リンク

研究者紹介