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2021年6月21日


温室効果ガス収支をマルチスケールで監視するための環境研究総合推進費プロジェクトの開始について(お知らせ)

2021年6月21日(月)
国立研究開発法人 国立環境研究所
国立研究開発法人海洋研究開発機構
国立大学法人千葉大学
気象庁気象研究所
 

   国立研究開発法人国立環境研究所(以下、「国立環境研究所」という)は、国立研究開発法人海洋研究開発機構、国立大学法人千葉大学、気象庁気象研究所と共同で提案した、環境研究総合推進費(※1) 戦略的研究開発領域 SII-8「温室効果ガス収支のマルチスケール監視とモデル高度化に関する統合的研究」を2021年4月から3年間のプロジェクトとして開始しました。
 

1.背景

 地球温暖化の抑止を目的として、2015年12月に気候変動枠組み条約・パリ協定が締結され、各国は温室効果ガス排出の削減目標を立てて協定の目標を達成するための努力を始めています(※2)。2023年には各国の排出削減に関する目標達成状況を確認し、新たな目標を策定するグローバルストックテイク(※3)実施が予定されています。しかし、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素に代表される温室効果ガスのグローバルな循環は十分に解明されておらず、国・地域や都市の単位で排出量を求めることは技術的に困難でした。そのため、複数の観測やモデルに基づく手法を組み合わせて、科学的に最も信頼性の高い温室効果ガスの収支(※4)を、複数の空間的広がり(マルチスケール)で求める方法を確立することが急務となっています。

2.プロジェクトの概要

 本プロジェクトでは、温室効果ガス収支を大都市から国・地域、そしてグローバルな空間スケールで定量的に推定し、パリ協定に貢献するよう速やかに報告できる体制の確立を目的としています。本プロジェクトは、以下の3テーマで構成されています。

○テーマ1: 大気・海洋での観測を実施し、それらのデータを用いたモデル解析(トップダウン的手法)によって地表の温室効果ガス収支を求めます(担当:国立環境研究所、気象研究所)

○テーマ2: 気候予測に用いられる地球システムモデルにおける温室効果ガス収支の再現性を向上させ、排出削減の効果を評価します(担当:海洋研究開発機構)

○テーマ3: 各種の排出インベントリ、物質循環モデル、衛星観測など(ボトムアップ的手法)を統合的に分析し、地表の温室効果ガス収支を求めます(担当:国立環境研究所、千葉大学)

本課題の特色として、テーマ間の連携を通じて様々な観測データ、モデル、統計情報を利用し、温室効果ガス収支の推定精度をこれまでよりも高めている点が挙げられます。

制度名・研究プロジェクト名:環境再生保全機構 環境研究総合推進費、SII-8「温室効果ガス収支に関するマルチスケール監視とモデル高度化に関する統合的研究」(JPMEERF21S20800)
実施期間:令和3年(2021年)4月1日〜令和6年(2024年)3月31日

図:SII-8課題のテーマ構成と相互連携を示す概要図

3.期待される成果

 本プロジェクトの実施により、日本およびアジア地域における温室効果ガスの収支を、観測データに基づいて高精度で評価する体制(システム)が構築されます。このシステムを用いることで、近年の国・地域別の温室効果ガスを速やかに評価することが可能となり、国や自治体による温暖化政策の立案に貢献することができます。大都市から国・地域、そしてグローバルまでのマルチスケールで温室効果ガス収支の評価結果を提供し、科学的には地球温暖化の原因とその影響に関する理解を深めることができます。本プロジェクトによる成果は、グローバルストックテイクへの貢献だけでなく、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、Future Earthを構成する活動の1つであるグローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)などへ幅広い貢献が期待されます。

※1 環境研究総合推進費は、持続可能な社会構築のための環境政策の推進にとって不可欠な科学的知見の集積及び技術開発の促進を目的として、環境分野のほぼ全領域にわたる研究開発を推進するための競争的資金です。環境省が示した重点課題および政策ニーズに沿って広く産学民官からの提案を募り、独立行政法人環境再生保全機構によって運営されています。

※2 日本の目標として、温室効果ガスの総排出量を2030年までに2013年比で46%削減することが掲げられています。

※3 もともとストックテイク(stock take)は「棚卸し」の意味ですが、ここでは温室効果ガス排出削減に関する各国の進捗状況の確認作業を指します。2023年に第1回が行われ、以降は5年毎に実施される予定です。

※4 温室効果ガスは、化石燃料や農地などの人為起源から大気に放出され、主に森林や海洋などの自然の吸収源によって大気から吸収されます。このような放出および吸収の全容を「収支」と呼びます。実際には温室効果ガスの種類によって、放出源(ソース)と吸収源(シンク)の性質は違っており、それを解明することが本課題の主目的の1つとなっています。

【参考リンク】

4.問い合わせ先

【研究に関する問い合わせ】
国立研究開発法人国立環境研究所 地球システム領域 
伊藤昭彦・丹羽洋介・三枝信子・遠嶋康徳

【報道に関する問い合わせ】
国立研究開発法人国立環境研究所 企画部広報室
e-mail:kouhou0@nies.go.jp
tel:029-850-2308