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2021年4月9日

日本の環境NPO/NGOの活動と課題
 についてのアンケート調査結果(お知らせ)

(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配布)

2021年4月9日(金)
国立研究開発法人 国立環境研究所
資源循環領域・社会システム領域
 室長      田崎 智宏
 

   国立環境研究所の研究者は、グリーン連合と協力して日本の環境NPO/NGOの活動と課題に関するアンケート調査を実施し、その結果(PDF:3.8MB)を公表しました。
 

1.背景と調査の目的

 1992年の地球サミットで採択されたアジェンダ21において非政府組織の役割強化が明記されて以来、日本においても環境NPO/NGOの役割が認識されてきました。2015年に国連総会で採択されたSDGsにおいても、市民社会組織の役割が明記されています。このように環境NPO/NGOの活動のエンパワーメントが期待される一方、新型コロナウイルスの感染拡大なども影響して、活動が停滞・遅延している状況にも直面しています。
 そこで本調査では、短期的・長期的の両方の観点から環境NPO/NGOの最新の活動実態と課題を明らかにすること、また、日本の環境NPO/NGOの最新の活動実態を明らかにしその将来展望に示唆を与える情報ならびに活動の基本情報を取得することを目的として、国立環境研究所の研究者とグリーン連合が協力してアンケート調査を実施しました。

2.調査方法の概要

 インターネットでのアンケート調査を2020年10~11月に実施しました。有効依頼数1,743件のうち、442団体からの回答を得ました。

3.調査結果の概要

 今回の調査で、日本の環境 NPO/NGO の様々な課題がデータとして明らかになり、厳しい現状が伺える結果となりました。多くの団体が、人材の育成・確保、代表者の高齢化に伴う後継者問題、財政基盤の脆弱さを挙げており、2002 年に環境省の研究会が指摘した環境保全活動を促進する上での課題がいまだに改善されていないことがわかりました。コロナ禍では、オンラインでの会議やセミナーなど新たな活動が始められていましたが、情報発信の強化や収入の増加といったポジティブな変化がみられたとする回答は1割未満でした。

団体の代表者の年齢についてのアンケート結果の図
図1:団体の代表者の年齢についてのアンケート結果。「50~69 歳」が49%、「70 歳以上」が43%、「30~49 歳」が8%、「30 歳未満」が0.27%と、50歳以下の代表者は10%もいない。


その他、主な調査結果は下記のとおりです。詳細は、次の報告書をご覧ください。

環境NPO/NGOの概要と現状について

・スタッフ数が1名~5名の団体が5割弱、会員数も100未満の団体が7割弱であり、小さな規模の団体が多かった。また、半数以上の団体代表者の年齢は70歳以上であり(図1)、代表者の高齢化が浮き彫りになった。
・年間の予算規模に関しては、300万円以上~1000万円未満の団体が最も多かったが、全体の約2割を占めるにとどまり、基本的に30万円未満から1億円未満まで幅広く分布していた。なお、1億円以上の団体のほとんどが、一般財団、公益財団などであり、NPO法人格を持つ団体の約9.5割は1億円未満、約8割が3000万円未満の予算規模であった。
・活動の主な収入源としては、全体的には補助金・助成金が最も多く、会費という回答割合を上回っていた。
・回答のあった団体のうち最も多かったのはNPO法人格を持つ団体であった。一方、NPO法の成立から20余年たっても法人格を持たない任意団体が調査回答数の4分の1程度を占めた。
・団体の最も主要な活動は、実践活動とする団体が大多数だったものの、実践活動による収益性は「全くない」あるいは「わずかである」の合計が約7割を占めており、ボランティア的な活動が多いことがわかった。

現状の課題と対応について

・当面の課題、中長期的課題ともに、活動を担う人材の確保やその若返り、財政基盤の強化を挙げる団体が多かった。約20年前に指摘されていた課題が、現在でも依然として改善されていないことがわかった。
・こうした課題を解決するためには、財政基盤の強化が最も重要と考えている団体が多かった。また、NPO/NGO活動の発展のためには、人々が環境問題を自分事として考えられるようになることと、こうした活動を支える制度や仕組み(税制や予算など含む)の双方が必要と考えている団体が多かった。

協働・連携の状況について

・国や自治体と協働・連携している団体が8割近くあり、企業や民間団体との協働・連携、他のNPO/NGOとの協働・連携も6割あるなど、様々な組織との協働・連携の経験はあるが、学生などの若者との協働・連携の経験がある団体は少なかった。
・協働・連携の内容としては、共同事業・共同連携とする団体が7割と最も多く、次いで情報交流が4割程度の団体で行われていたが、人材交流はあまり行われていなかった。

環境NPO/NGOの連合について

・環境NPO/NGOの集結の必要性については8割近くが「必要」としていた。しかし、連合体の存在を知っているのはわずか2割弱であった。

政策との関わりについて

・国や自治体の環境政策に参加した経験については、経験がある団体が5割強で、4割強の団体は経験がなかった。
・環境政策に参加経験のある団体の多くが市町村レベル、次いで道府県レベルでの参加であり、団体の経験や専門性を活かせる参加であり、その参加が団体のスキルアップやネットワーク強化につながったと回答していた。
・国や自治体に対する政策や事業の提案経験について、提案して採用されたことがあると回答した団体が4割強であった。実現のための有効な手段としては、担当部署への直接な働きかけが有効との回答が多かった。他方、政策提言のためのリソースについては、経験あるスタッフ、専門家などサポートしてくれる人材、有効な伝達チャンネル、市民の支援など、全てが不足しているという回答であった。

新型コロナウイルスの経験について

・新型コロナウイルスの感染拡大により生じた困ったこととして、イベントや会議ができなくなった、活動地やフィールドに行けなくなった、それらによる収入の減少などが多く挙げられていた。
・一方、オンラインでの会議やセミナーなど、新たな活動が始められていたが、情報発信が強化された、集客を増やせた、収入を増やせたというポジティブな変化がみられたとする回答は1割にも満たなかった(図2)。
・この経験を通じて、地域・社会や経済のあり方などを変える必要があるという回答が8割を超え、コロナ禍を契機に、改めて現在の暮らしや経済・社会のあり方を深く考える機会になっていた。

新型コロナウィルスの感染拡大により、貴団体の活動にどのような影響がありましたか?というアンケート結果をまとめたグラフ
図2:新型コロナウイルスの感染拡大により新しく始めたこととしては、「オンラインの会議やセミナー」が43%で最も多かったが、「何もない」との回答も38%に上った。

4.グリーン連合について

 グリーン連合は、2015年6月5日に設立された環境NGO・NPO・市民団体の全国ネットワークです。

グリーン連合のホームページ
https://greenrengo.jp/【外部サイトに接続します】

5.問い合わせ先

【研究に関する問い合わせ】
国立研究開発法人国立環境研究所
資源循環領域 循環型社会システム研究室室長 社会システム領域兼務
田崎 智宏(たさき ともひろ)

【報道に関する問い合わせ】
国立研究開発法人国立環境研究所 企画部広報室
e-mail: kouhou0(末尾に@nies.go.jpをつけてください)
電話:029-850-2308