ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方
2017年2月28日

「第13回日韓中三カ国環境研究機関長会合(TPM13)」の開催

【行事報告】

近藤 美則

 国立環境研究所(NIES)は、韓国の国立環境科学院(NIER)および中国環境科学研究院(CRAES)と共に「日韓中三カ国環境研究機関長会合(TPM)」を2004年から毎年開催しており、北東アジア地域の様々な環境問題の解決に向けた研究協力を推進しています。第13回となる今回(TPM13)は、平成28年10月31~11月4日に中国昆明市において、CRAESの主催、NIESとNIERの共催として開催されました。

 初日の夕方以降、参加者一同が昆明市に集まりました。

 二日目のTPM13本会議では、CRAES副院長の宋永会(SONG Yonghui)氏の開会挨拶後、NIESの住明正理事長、NIERの朴辰遠(PARK Jinwon)院長が基調講演を行いました。機関長らはこれまでの研究協力を高く評価すると共に、今後より密接な交流・協力の推進が重要であると述べました。また、住理事長は今年4月から始まったNIESの新たな中長期計画のコンセプトや組織体制、研究計画、NIES初の支部である福島支部について紹介しました。次に、各機関のTPM12以降の研究活動の概況が報告され、原澤理事は今年4月から新しく始まった第四期中長期計画の概要について、住理事長の発言内容を補完する形でNIESの各センターや各研究プログラム等を紹介しました。その後、環境保健とリスク評価に関するトピックを3機関が発表しました。NIERはコンビナートに近接する地域住民の環境健康影響評価、CRAESは中国における粒子状物質の健康影響に関する研究、NIESからは環境リスク・健康研究センターの鈴木センター長が健康と環境リスクに関する研究の現状と将来の方向性について紹介しました。

共同コミュニケ署名後に握手を交わす三機関長
(左から住理事長、宋副院長、朴院長)

 午後からは、CRAES国際室の張孟衡(ZHANG Mengheng)室長がワーキンググループを代表して、9つの重点研究分野(PRA)と研究のキーワードを紹介し、その後、各PRAをリードする主担当機関(LCI)がTPM12以降の研究活動を報告しました。具体的には、CRAESが淡水汚染、都市環境・エコシティ、化学物質リスク管理について、NIERがアジア大気汚染、砂塵嵐(黄砂)と固形廃棄物管理について、NIESからは山口晴代研究員(生物・生態系環境研究センター生物多様性資源保全研究推進室)が生物多様性、増井利彦室長(社会環境システム研究センター統合環境経済研究室)が気候変動、中山祥嗣室長(環境リスク・健康研究センター暴露動態研究室)が災害環境について、3機関が参加した共同ワークショップや研究協力等について発表しました。その後、TPM12にて原則作成に合意したロードマップ(2015年から2019年までの5年間)について、各機関の事務局が共同作業をして取りまとめた案を承認しました。また、今後のPRAの考え方について議論するとともに、次の1年間の各PRAのLCIは変えないことを決めました。翌3日に、TPMの枠組みによる3機関の協力推進を謳った共同コミュニケがまとめられ、住理事長と朴院長、宋副院長が署名しました。

TPM13 の参加者


 三日目には、雲南省環境科学研究院の創立40周年記念学術セミナーとTPMの国際ワークショップを兼ねたセミナー「水質汚染対策技術と生態系の健全性」が開催されました。これにはTPMのメンバーの他、米国、モンゴルからも発表者を招聘し、活発な議論を行いました。NIESからは、山口晴代研究員が日本のアオコ形成シアノバクテリアの動態とそのゲノム解析に関する研究、福島路生主任研究員(生物・生態系環境研究センター生態系機能評価研究室)がメコン川流域のダム開発による生態系サービスの低下に関わる研究、山本裕史室長(環境リスク・健康研究センター生態毒性研究室)が日本における水質環境基準とリスク評価の現状と課題について発表し、パネルディスカッションにおいても参加者との間で活発な討議がなされました。

 四日目は、Haidong Wetland(海东湿地)及び世界自然遺産であるStone Forest公園(石林风景区)を視察し、環境保全に関する長期的な活動について説明を受けました。また、現地説明者と質疑応答を含めた交流を行いました。

 本会議及び現地視察を通じ、湖沼環境の改善及びPM2.5が三機関の共通の課題であることを再確認しました。このため、湖沼環境保全については、国環研が分室を設置予定の琵琶湖環境科学研究センターと中国側は既に共同研究の実績があることを踏まえ、TPMの下での今後の研究協力の推進を、また、PM2.5については、PRA(「アジア大気汚染」及び「黄砂」)における活動の推進を図るつもりです。そして、国内的には、環境省とも調整しつつ、国内研究の推進及び更なる研究体制の発展を図りたいと考えています。

 次回のTPM14は、2017年秋に日本においてNIES主催で開催される予定です。

 なお、本会合については、国立環境研究所ホームページに掲載しております。
 (http://www.nies.go.jp/whatsnew/20161214/20161214.html)

(こんどう よしのり、企画部 国際室長)

関連新着情報

関連記事

関連研究報告書

表示する記事はありません