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2023年5月16日

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災害・事故時の環境リスク管理に関する情報基盤の公開について
—災害・事故が原因で環境中に排出された化学物質への対応を支援するためのウェブサイトを開発・公開し、運用を開始しました—

(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付)

2023年5月16日(火)
国立研究開発法人国立環境研究所

 

 国立研究開発法人国立環境研究所環境リスク・健康領域の今泉圭隆らの研究チームは、国立環境研究所のウェブサイトにおいて、「D.Chem-Core ー災害・事故時の環境リスク管理に関する情報基盤ー」(以下「D.Chem-Core」という。)を公開しました。D.Chem-Coreは、災害・事故等に起因して化学物質の環境排出が起きた際に、行政担当者や専門家などが有用な情報を適切に入手することを支援するために開発されたウェブサイトで、どなたでも無料で利用できるものです。
 D.Chem-Coreの公開により、対策方針の決定に有用な情報を行政担当者や専門家に迅速かつ適切に提供することができるようになると期待されます。
 具体的には、①緊急時に対策が必要な化学物質を特定すること、②リスクの時間的・空間的及び質的な特徴を迅速に把握すること、③実態解明のための手法を入手すること、が可能になります。現在は掲載情報が不十分な部分もありますが、今後、情報の蓄積やシステムの改良を継続的に実施していくことで、より良い基盤にしていく予定です。

 

1. 研究の背景と目的

我々は様々な化学物質に囲まれて暮らしています。通常の活動(化学物質の製造や調合などの工業的な段階や、製品使用など)の際に環境中に排出される化学物質は、国や自治体の各種規制や事業者の自主的取り組みなどによりリスク管理されています。しかし、災害・事故時に突発的に排出される化学物質については、対応にあたる行政担当者や関係する専門家が臨機応変に対応しているのが実情です。事故対応については、マニュアル策定の手引き注釈1が整備されているため、それを踏まえて、物質ごとの情報や具体的な測定手法などの事故対応に役立つ情報を収集・整備し、効果的・効率的にそれらを引き出す情報基盤を構築することで事故対応力を強化させることが可能です。特に近年、自然災害が頻発化・甚大化している中において、緊急時の対応力を強化することは非常に重要な課題になっています。
国立環境研究所 環境リスク・健康領域の今泉圭隆らの研究チームは、環境研究総合推進費(戦略的研究開発課題S-17)「災害・事故に起因する化学物質リスクの評価・管理手法の体系的構築に関する研究」(研究代表者:国立環境研究所 企画部フェロー 鈴木規之)(以下「S17研究」という。)に参画し、災害・事故時に環境排出される化学物質への対応の際に情報基盤として利用可能なウェブサイトを構築することを目的に研究を進めてきました。

2. ウェブサイトの概要

【タイトル】D.Chem-Core ー災害・事故時の環境リスク管理に関する情報基盤ー
【公開場所】 国立環境研究所ウェブサイト
【URL】 https://www.nies.go.jp/dchemcore/
【公開日】 2023年5月16日

3. ウェブサイトの構成

災害・事故時等の緊急時における様々な状況に対応できるように多角的なメニューを作成し、初めてサイトを訪れた利用者でも必要な情報を効率的に得ることができる構成としました。状況や目的から絞り込むときは「状況別メニュー」や「目的別メニュー」を、より具体的な条件で情報を絞り込むときは「情報全体からの検索」を利用することができ、最終的にはどのメニューからでも同じ情報を入手することが可能です。

状況別メニュー

災害・事故等に伴い環境中に突発的に化学物質が排出されるような事象の場合、その状況は刻々と変化します。それに伴い、対応者が把握・考慮すべきことも刻々と変化します。この状況別メニューでは、「事前」「発生直後」「調査・検討」「事中の対策」「事後の対応」という状況別に、利用者が知りたい情報を迅速に収集できるように整理しました。

目的別メニュー

知りたい情報の種類に応じて、「物質情報検索」「地理情報検索」「分析法検索」などそれぞれ効率よく検索できるようにしました。

情報全体からの検索

排出等の事象に関する情報には、その原因となる要因(地震、事故など)や時間軸(発生直後、事中など)などの分類があり得ます。また、分析法など排出等の事象に直接関係のない情報であっても、利用が想定される時間軸での分類が可能です。このメニューでは、そういった関連性や情報の種類に応じた“情報タグ”を用意し、それぞれの情報タグで絞り込んで該当する情報だけを効率的に取り出せるよう工夫しました。

ウェブサイトに収載またはリンクされている情報

D.Chem-Coreには、さまざまな情報源からの情報とともに、S17研究に参加された以下の分担機関との共同研究の成果を収録しています。
分担機関:大阪大学、お茶の水女子大学、明治大学、静岡県立大学、横浜国立大学、国立保健医療科学院、国立医薬品食品衛生研究所、東京医科歯科大学、名古屋市立大学、産業技術総合研究所、株式会社堀場製作所、東京都環境科学研究所、大阪府立環境農林水産総合研究所

4. 想定利用者・用途

行政担当者や専門家など災害・事故時の対応にあたる方、対策の方針を決定する際に利用する根拠情報を収集・整理する方、さらに関心を持たれる一般の方にもご利用いただきたいと考えています。
D.Chem-Coreを利用することにより、①緊急時に対策が必要な化学物質を特定すること、②リスクの時間的・空間的及び質的な特徴を迅速に把握すること、③実態解明のための手法を入手することなどが可能になり、緊急時の化学物質リスク管理の対応力強化に貢献します。

5. 今後の展望

掲載情報の充実化や新たな機能の追加など、利用者からのご意見を参考にしながら、情報蓄積やシステム改良を継続的に実施して、より実用的なウェブサイトにしていく予定です。

6. 注釈

注釈1:環境省「地方公共団体環境部局における化学物質に係る災害・事故対応マニュアル策定の手引き」(令和4年3月)https://www.env.go.jp/content/900518774.pdf

7. 研究助成

D.Chem-Coreは環境省・(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費「戦略的研究開発課題S-17:災害・事故に起因する化学物質リスクの評価・管理手法の体系的構築に関する研究」(JPMEERF18S11700)(2018-2022年度)を受けて実施した研究・開発の成果です。
(S17プロジェクトページ:https://www.nies.go.jp/res_project/s17/index.html

8. 発表者

本報道発表の発表者は以下のとおりです。
国立研究開発法人国立環境研究所
環境リスク・健康領域リスク管理戦略研究室
主幹研究員 今泉圭隆
主任研究員 小山陽介
企画部
フェロー 鈴木規之

9. 問合せ先

【研究に関する問合せ】
国立研究開発法人国立環境研究所 環境リスク・健康領域
リスク管理戦略研究室 主幹研究員 今泉圭隆

【報道に関する問合せ】
国立研究開発法人国立環境研究所 企画部広報室
kouhou0(末尾に”@nies.go.jp”をつけてください)

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